1. 正座ができない=膝が悪い?それだけではない理由
「正座ができない」「膝が痛くて曲がらない」——そう聞くと、多くの人は膝関節そのものに原因があると思いがちです。
もちろん、変形性膝関節症などによって膝の可動域が狭くなっている場合もあります。
でも実は、“膝だけ”に注目していても正座ができるようになるとは限りません。
なぜなら、正座とは「身体全体が一連の動作として連動する」ことで初めて実現する動きだからです。

2. 正座に必要な3つの要素
① 膝関節の屈曲
約135〜150度の屈曲可動域が必要。大腿四頭筋やハムストリングスの柔軟性も影響。
② 足関節(足首)の柔らかさ
足の甲を伸ばし、体重を預けられる柔軟性が必要。足関節の背屈制限があるとバランスを崩しやすくなる。
③ 股関節・骨盤の動き
骨盤が後傾しすぎていると重心が後ろに逃げ、膝に過剰な負担がかかる。股関節の柔軟性と骨盤の“立てる力”が必要。
3. 正座ができない人に共通する“感覚のエラー”
- お尻を後ろに引いて重心を逃がすクセ
- 膝を曲げると腰や背中が丸まってしまう
- 足首が硬く、足の甲が床にしっかりつかない
これらはすべて「感覚のズレ」から起こっているケースが多いです。
つまり、構造的に問題がなくても、**“自分の身体をうまく感じられていない”**ことで正座が難しくなっていることもあるのです。
4. 正座は“静的な姿勢”ではなく“動作の結果”
正座は“座った姿勢”というより、**「しゃがみ込み〜体重を乗せる〜背筋を保つ」**という一連の動作の結果として成立します。
だからこそ、部分的な柔軟性や筋力よりも、“連動した動きができるか”が大切になります。
- 足元から重心がスムーズに移動するか
- 股関節が緊張せず曲がっているか
- 背骨が潰れずに座れているか
これらの条件が揃って初めて、無理のない正座が可能になるのです。
5. できない理由を“身体の地図”から見直してみる
正座ができない理由を膝だけに限定してしまうと、
- ひたすら膝のストレッチをする
- サポーターや装具で膝を固定する
といった“対症療法”に終わってしまいがちです。
でも本当に必要なのは、
- 自分の身体のどこが固まっているか
- どこが動けていないのか
- どこを感じられていないのか
を丁寧に見直すこと。
それは、“身体の地図(ボディマップ)”を更新するような作業でもあります。
6. 正座をラクに近づけるステップワーク
▼ ステップ①:足首ストレッチ(つま先立ち→正座風)
足首を柔らかくすることで、正座時の足の甲への圧が減ります。
▼ ステップ②:しゃがみ込みスイング(骨盤と重心の誘導)
壁などにつかまりながら、お尻を落とし骨盤を前後にスイング。股関節と体幹の協調性が高まります。
▼ ステップ③:床座りの姿勢で“背中の縦軸”を意識
正座そのものを目指す前に、座位姿勢で“背骨を立てる感覚”を育てておくと、身体が自然と整いやすくなります。
7. 膝に頼らず、身体全体で“座る”ということ
正座ができる身体とは、柔らかくて強い身体ではなく、“支えと連動がうまく取れている身体”。
そのためには、膝だけを攻めるのではなく、足首・股関節・体幹といった全身の感覚とつながる必要があります。
「膝を曲げれば正座できる」は誤解かもしれません。
身体全体で“座れる力”を、少しずつ思い出していく。
それが、膝を守ることにもつながっていくのです。
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