ども。
武内整形外科クリニックに理学療法士、テラサワです。
今日の記事は
背骨の機能性は大事だよ
というお話。
肩が痛いヒトも、背中が痛いヒトも、腰が痛いヒトも、膝が痛いヒトも・・・
背骨の機能性が症状に関与している可能性って実はすごく高いんです。
それはつまり、
背骨のコンディションをしっかり整えれば、様々な痛みの症状が軽減する可能性がある
ということ。
もしかしたらアナタの腰痛や膝の痛みも、背骨の機能性を十分に確保できれば軽減できるかもしれません。
背骨の構造について知ろう
これが背骨。医学的用語で【脊柱】と言います。
背骨って、首からお尻までこんなに沢山の骨が繋がって作られているんですね。
首の骨が7個、胸の骨が12個、腰の骨が5個、そして骨盤からおしりにかけての骨で構成されている脊柱は、緩い逆S字のフォルムを描いており、この逆S字が高性能なサスペンションの役割を担っていると言われています。
要するにこの逆S字がバネみたいな役割を果たして、身体にかかる衝撃を吸収してくれているというワケです。
ちょっと専門的な言い方をすると、胸椎の後湾、腰椎の前湾を含めた脊柱の構造を『生理的湾曲』と言います。
4つ足動物から直立二足歩行へと進化を遂げた人間が手に入れた、スーパー高性能なサスペンション機能です。
背骨がうまく機能しないとどうなるの?
背骨がうまく機能しないことで身体に生じる可能性がある弊害はこんな感じ。
- 肩こりがひどくなる
- 首や背中が張る
- 腰、股関節が重だるくなる
- 膝が痛くなる
- 足首が痛くなる
主な症状はこのあたりですが…人によっては頭重感やめまい等に繋がるという方もいて、実に様々な症状として現れてくる可能性があります。
また、それぞれの関節にかかる負担が増すことで
- O脚
- 外反母趾
- 変形性股関節症
- 変形性膝関節症
- 椎間板ヘルニア
- 脊柱管狭窄症
- ぎっくり腰
- 頚椎症
など、結果的にこういった疾患の発症リスク増加にも繋がります。
機能的な背骨の条件
そんな高性能機能を持つ背骨ですが…
その機能を十分に発揮できなくなっている人というのは実は非常にたくさんいます。
つまり、
サスペンションという特性を十分に活かせずに、個々の関節に非常に大きな負担がかかっている
ということ。
本来であれば背骨のクッション性で多くの衝撃を無意識のうちに緩和できるはずなんですが…
その機能が十分に発揮できないことで、背中や腰はもちろん背骨とは直接関係がないように思える肩や股関節、膝関節、足関節などにも大きな負担がかかってしまうんです。
では…機能的な背骨の条件てなんでしょう?
具体的に言うと
- 生理的湾曲が正しく保たれていること
- 背骨の関節に適度な可動性・たわみがあること
この2点。
生理的湾曲が正しく保たれていること
前述した背骨の逆S字のフォルム、生理的湾曲。背骨の機能はこの構造があってこそです。
ではこの生理的湾曲が崩れてしまう主な原因は何かといえば…良くない姿勢を続けてしまうことによる筋力低下。
本来、生理的湾曲というのは、骨と筋肉によって構成されます。
連なった骨を、いろんな筋肉が支えたり引っ張ったりして機能的な逆Sと字というものを維持しているんですね。
ところが…良くない姿勢、いわゆる正しく筋肉を働かせない姿勢をとり続けていると…
正しく生理的湾曲を維持するために必要な筋肉の、筋力低下が生じます。
首とか背中とか、腰回りとか…いわゆる脊柱起立筋というやつですね。
正確に言うと脊柱起立筋だけ、というワケでもありませんが
要するに悪い姿勢でいると、正しい背骨の位置を保つために働く筋肉が弱くなって生理的湾曲が崩れてしまう…とイメージしてもらえればOKです。
背骨の関節に適度な可動性・たわみがあること
背骨のサスペンション機能を最大限発揮するためには、生理的湾曲は当然として個々の関節の可動性というものが必須となります。
20個以上ある背骨それぞれには小さな関節があって、可動域が存在します。
腰の骨を例に挙げてみてみましょう。
①~⑤が腰の骨、腰椎。その間にはそれぞれ関節があるのが分かると思います(椎間関節)。
そしてその間に入っているクッション材が椎間板。
背骨の可動性やたわみというのは、この椎間関節と椎間板で構成されています。
で、この可動性やたわみを阻害してしまう因子は何か、というと
椎間板の劣化と椎間関節の周りの筋肉や靭帯の硬化や短縮です。
筋肉や靭帯の名称等は割愛しますが、背骨の周りにはたくさんの筋肉や靭帯があります。これらが硬くなったり椎間板がヘタってしまうと背骨は本来の可動性・柔軟性を発揮できなくなってしまいます。
背骨の機能性を保つために
生理的な湾曲を維持するための筋力。
背骨の関節の可動性。
この2点をいかに維持するかということが、背骨の機能を保つうえで非常に重要なポイントになります。
では、この両者の機能を維持するために我々は自分自身でどんなことが出来るのでしょうか。
端的言えば
- 背骨を丸める
- 背骨を反らす
- 背骨を捻じる
- 背骨の動きに『意識』を向ける
- ストレッチだけではなく筋トレ要素も考える
この5つ。
この5つの要素を普段から少しだけ意識していれば、それだけでも背骨の機能性はずいぶん変わっています。
背骨を丸める
デスクワーク中心の方などは猫背になっているという人も多いと思いますが・・・
無意識に背中が丸まっていることと、意識的に背中を丸める事では意味合いが違います。
大切なのは、意識的に身体を丸めるということ。
例えばこんなポーズですね。ヨガで言うところのネコのポーズ。
簡単な動きに見えますが、背骨を上手く使えない人にとっては結構難しい動き。
背中を反らす
先ほどのネコのポーズは、背骨を丸めるだけじゃなくて反らせる動きまでやってワンセットです。
この写真ほどきれいに反れなくても構いませんが、イメージはこんな感じで。
ちなみにこういった動きを行おうとすると、ついつい腰(腰椎)で動きを出そうとしがちなんですが・・・
意識としては腰だけでなく背中全体を反らせるような意識でやってみましょう。
腰はけっこう柔らかいけど背中の上の方がガチガチ・・・という人って結構多いんですが、そういったタイプの人は背中の骨(胸椎)付近の動きが非常に少ないケースがほとんどだったりします。
背骨を捻じる
この背骨を捻じるという動作を意識的に行うことって、日常生活の中ではあまりありません。
せいぜい、後ろを振り向く時に身体を捻じるくらい?・・・もう少しあるか(笑)
いずれにせよ、しっかりと身体を捻じるという動作は、大人になるとスポーツでもやっていない限りほとんど行いません。
このあたりの動きはオーソドックスですが、中々効果的。
それほど辛い動きではないので、就寝前や起床直後に軽くやっておくだけでもかなり背骨のケアになります。
ちなみに、背骨を捻じるというと、
こういったストレッチを行う方、多いんじゃないでしょうか?
この姿勢は、どちらかというとお尻の筋肉を伸ばすのに効果的なポーズ。
お尻の筋肉が硬くて腰が痛い、という場合は非常に有効なんですが、
胸椎が硬くて腰椎がある程度柔らかいヒトが行うと、腰の部分で過度に可動性を作ってしまい、逆に腰を痛めるというケースもあります。
ということで、背骨を捻じる、という目的を考えた場合は座って行うストレッチの方がおすすめです。
背骨の動きに意識を向ける
これはもう単純に意識の問題なんですが・・・
例えば椅子に座って身体を丸めた時、アナタの場合は背骨のどこを中心に丸めていますか?
こんな風に質問されたとき、正確に自分の姿勢をイメージできる人って案外少ないんです。
意識するポイントとしては、背骨を大まかに頚部・胸部・腰部の3つに分けてイメージすること。
イラスト左でいうと、猫背に見えるけど実は腰は少し反っていて胸椎のあたりで身体が丸まっている・・・とかですね。
自分の姿勢を正しくイメージできるという事は実はすごく大切な事。
スポーツをやっていればボディイメージの重要性を考えたりしますが・・・日常生活においてもけっこう重要なんです。
特に背骨の状態なんて、言われるまで意識したことなかった、というヒトがほとんどだったりします。
おわりに
背骨の機能性というものは本当に重要であるにも関わらず、一般の方にはあまり認知されていないというのが実状です。
普段から背骨をしっかり使えていれば、それだけで予防できる痛みや疾患が沢山ある・・・この記事を読んで、少しでもそんな意識を持ってもらえたらすごくうれしいなーと思います。
ちょっと長くなりましたが、今回の記事は以上です。
ではまた。