名前はけっこう有名ですよね、広背筋。その名の通り、背中に広がっている大きな筋肉です。
今回の記事では、この広背筋を取り上げてお話をしてみようかと思います。
整形外科クリニックで働いていて、首肩こりや腰痛の患者さんのリハビリをする際はテラサワ、ほぼほぼこの広背筋の機能も確認するようにしているんですが…
広背筋は
- 首の痛み
- 肩の痛み
- 腰の痛み
こういった多くの人を悩ませる症状に大きく関わっている事が多いんです。
記事の後半では広背筋を効率的にケアするエクササイズも紹介していきますので、興味のある方は是非最後までお付き合いください。
ではさっそくいってみましょー。
まずは広背筋をイメージしてみよう
広背筋はどのあたりにどんなふうについているのか…細かい部分は知らなくていいので、ざっくりとイメージしてみましょう。
こんな感じですね。
ちなみに、広背筋と僧帽筋がごっちゃになってどっちがどっちか分からないという人がけっこういます。
どちらの筋肉も首や肩の症状に関与することが多いんですが、位置関係はこのようになっています。広背筋を部分的に覆いながら、より表面に存在しているのが僧帽筋なんですね。
今回の記事は広背筋にスポットを当てていますので僧帽筋についてのお話は割愛しますが…別記事で僧帽筋についても取り上げようと思っているので興味がある方はそちらもどうぞ。
では改めて広背筋の話に戻ります。
広背筋の主な働きは
- 肘を引くような動き(肩関節の伸展)
- 脇を締めるような動き(肩関節の内転)
- 肩を内にねじるような動き(肩関節の内旋)
といったようなもの。
これらの動きが複合的に合わさると
こんな感じ。ちょうど順手で懸垂をするような動作で広背筋は最も筋力を発揮します。
ところで、広背筋をイメージする上で押さえておきたい構造的なポイントが2つあって。それがこれ。
- 背中から腰を幅広く覆っている
- 捻じれながら上腕骨の前の方についている
この2つのポイントこそが、首肩腰の様々な症状に影響を与える原因となっているんです。
背中から腰を幅広く覆っているということは…
背中から腰を幅広く覆っているということは、当然広背筋が硬くなったりうまく機能しなくなると背中の症状や腰の症状に影響を及ぼしてきますよね。
身体を捻じる動作にも大きな影響が
ちなみに、広背筋はこんな感じで身体の側面もそれなりに覆っています。
ということは、体幹をねじったり横に倒すような動作の際も広背筋の柔軟性がある程度必要になりそう。そんな風に考えれば、普段から身体を捻じるような動作をあまりしない人は、それだけでも広背筋が硬くなりやすい要因を作っているという事もイメージできるんじゃないでしょうか。
たとえば数年前と比べて寝返り動作が大変になってきたなーというアナタ。おそらくその広背筋…硬くなってます。
筋膜を介してお尻の筋肉にも繋がっている
腰が痛いなーと思う時ちょうど痛みが出ている付近にあるのは、なんだと思いますか?腰の筋肉?
ちょっと深い所にある脊柱起立筋や腰方形筋、内外腹斜筋といったような筋肉が関わっている可能性ももちろんありますが、比較的多いのは胸腰筋膜という筋膜や大殿筋などのお尻の筋肉なんです。
図を見ると分かる通り広背筋はちょうど腰のあたりで胸腰筋膜と一緒になり、その胸腰筋膜は大殿筋と直接結合しています。
それが何を意味するかと言うと
広背筋が硬くなれば胸腰筋膜も一緒に硬くなり、胸腰筋膜とくっついている大殿筋も硬くなる
ということ。
背中が張ってきたなーと思いながら仕事を続けていたら段々腰の周りも痛くなってきて、気が付いたらなんだかお尻と腰の境目あたりが重痛くなってきた…という経験はありませんか?
これはまさに、広背筋の疲労が筋膜を介してお尻に伝わってしまう典型的なパターンです。腰のマッサージをしてもなんだかスッキリしないのは、背中やお尻がガチガチに硬くなっているからかもしれません。
捻じれながら上腕骨の前の方についているということは…
捻じれながら上腕骨の前の方についているという構造は、肩の機能を発揮する上で重要なポイントのひとつ。ただ、その機能的な構造は、いったん短縮して硬くなってしまうと首肩周りの様々な症状を引き起こす引き金になってしまうかもしれないんです。
機能低下が猫背の原因につながる
捻じれて上腕骨の前側にくっついていることで、オレンジの矢印のような上腕骨を内側にねじる(肩関節の内旋)力が効率的に発揮しやすくなります。この筋肉の特性自体は腕の機能として大切な要素のひとつではあるんですが、広背筋が縮んで硬くなってしまうとこの特性がマイナスに働いてしまうんです。
もうひとつ。広背筋が硬くなると外側のエッジの部分が縮んで引っ張られやすくなるんですが、そうすると青色の矢印のように上腕骨を引っ張ろうとします。
さて、広背筋が縮んで硬くなって、オレンジの矢印と青の矢印の方向に引っ張られると、どんな姿勢になりやすいと思いますか?
はい、こんな感じです。
広背筋の短縮は巻き肩の原因因子となりがちなので、その経過の中で猫背やストレートネックも誘発させやすくなってきます。
巻き肩、猫背、ストレートネックは首や肩の痛みや張り感に直結する姿勢なので、広背筋が縮んでいるとそういった症状に悩まされやすくなってしまうという事態に繋がります。
広背筋を機能的に使うために
広背筋が縮んで硬くなると様々な弊害がある、ということは理解して頂けたんじゃないでしょうか?
広背筋をちゃんと機能させるためにはしっかり伸び縮みさせて、しっかり筋力をつけることが大事、ということは言うまでもないんですが…
実際のエクササイズを紹介する前にもう1点だけポイントを。
広背筋というのは見ての通りかなり幅広な筋肉。で、機能的なことを言うと場所によってけっこう働きが違うんです。大まかに機能を分けると上部繊維(横行繊維)と言われる部分と下部繊維(斜行繊維)と言われる部分の2つの働き方があると言われています。このあたりの機能にも目を向けながらエクササイズを行うと、より効果を得られやすくなるんじゃないかと思います。
広背筋の上部繊維(横行繊維)の働き
広背筋上部繊維の機能は主に、肩関節の動きの中で影響が大きいと言われています。特に脇を閉めるような動作や肩を内にねじるような動作(肩関節の内転・内旋)で働きやすいので、広背筋上部繊維が硬くなると手のひらを上に向けながら横に腕を伸ばす、といったような動作が窮屈になってきます。
広背筋の下部繊維(斜行繊維)の働き
広背筋下部繊維は、どちらかというと肩よりも体幹の動きに関与していると言われています。体幹を左右に倒したり、捻じったり…こういった動きに硬さを感じているようであれば広背筋の下部繊維が硬くなっているという可能性が考えられます。
広背筋を機能的に使うためのエクササイズ
さて、ではここからは実際に広背筋の機能を高めるエクササイズを紹介していこうと思います。
ポイントは以下の3点。
- 広背筋をしっかりと伸ばす
- 広背筋をしっかりと使う
- 上部繊維、下部繊維ともにしっかり機能させる
紹介するエクササイズは非常に簡単なものを3つだけ。筋トレよりもストレッチ要素が強い運動になります。でもこの3つを毎日続けていたら広背筋のコンディションはかなり良くなっていくハズ。
是非取り組んで頂ければと思います。
エクササイズ① 仰向けでバンザイ
これはめちゃめちゃ簡単な運動。とはいえ、広背筋が硬くなっていると中々大変だったりします。あと、肩周りに硬さや痛みがある方は無理のない範囲で行ってください。
ではさっそくやり方です。
まずはこの姿勢から。
手に持ってるのはツッパリ棒。ホームセンターで買った¥1000くらいのもの。なければタオルでも構いません。ポイントは、両方の肘がしっかりと伸びていて、手のひらが内側を向いた状態になっているということ。膝は立てていても伸ばしていても構いません。
そこから…こんな感じで両手をバンザイ。
これをゆっくりと続けます。
出来れば、両方の親指が床につくくらいしっかりと伸ばしてみてください。最初はだいたい、10回×3セット程度を目安にしてみましょう。
肩が痛くて手が挙がらないという方は、痛みを感じることなく上げられるところまでで構いません。最後までしっかり上げられない、動作の中で腰が反る、こういった方は広背筋が縮んで硬くなっている可能性があります。
エクササイズ➁ 横向きに寝て上半身をグッとねじる
これは身体を捻じる動きが硬い方にはかなり効くはず。最初の姿勢はこんな感じです。
頭の後ろで両手を組み、横に寝ます。股関節、膝関節は曲げておきましょう。
で、ここから…
こう。
上側の肘をグッと開きながら身体を捻じります。この際、下についている側の膝(写真だと右膝)は浮かないように注意しましょう。両肘が下にペタッとつくところまで身体を捻じれれば理想的。
エクササイズ③ 体幹の横側をしっかり伸ばす
最後はコレ。
膝等が痛くてこの姿勢がとりにくいという方は無理しないでくださいね。ポイントは、上げている方の手の肘をしっかりと伸ばすこと。広背筋が硬くなっていると簡単そうに見えてけっこうしんどいです。背骨や骨盤の位置の捻じれや股関節の柔軟性向上にも効果があります。
おわりに
今回の記事では、広背筋について掘り下げてお話してみました。
猫背やストレートネックに非常に関連性のある筋肉なので、場合によっては肩首腰だけでなく膝や足首なんかの痛みに繋がることもあるためケアが非常に大切な広背筋。
でも普段はあまり意識を向けない筋肉だと思います。
難しい理屈はともかく、今回紹介した3つのエクササイズを続けてもらえると硬くなった広背筋も少しずつ柔らかくなってくると思うのでぜひ続けてみてください。
とはいえ、ガチガチに硬くなってしまっている場合は徒手的にしっかりと伸ばさないと中々諸症状が緩和出来ないかもしれません。
そんな時は是非、武内整形外科クリニックでリハビリをどーぞ(笑)
では今回はこの辺で。
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