交通事故後のむち打ち症、いわゆる頸椎捻挫は当クリニックでも受診理由として比較的多い疾患のひとつです。事故直後より数日経ってから出現することも多い頸椎捻挫は、思いのほか症状が改善するまで時間ががかる、あるいはいつまで経っても良くならないといった印象を持たれている方も少なくありません。
当クリニックでは、運動器リハビリの対象にもなる頸椎疾患ですが・・・実際にリハビリをすることで症状が改善するのか疑問をお持ちの方もいらっしゃると思います。本記事では、そんな頸椎捻挫に対する運動器リハビリの有用性についてお話させて頂きます。是非ご参考にされてください。
頸椎捻挫の症状には運動器リハビリが有効
頸椎捻挫という診断を受けたのであれば、基本的には運動器リハビリを受けた方が良いです。もちろん、リハビリを受けないと治らない、という訳ではありませんが・・・適切なリハビリを適切な時期に受けることで、
- 症状が改善するまでにかかる時間が短くなる
- 後遺症が残りにくくなる
- 首に変なクセがつかない
こういったメリットが見込めます。
症状が改善するまでにかかる時間が短くなる
症状の程度 | 治療にかかる期間の目安 | 安静にする期間の目安 |
軽度 | 2週間~1か月程度 | 3日~1週間程度 |
中等度 | 1か月~4ヵ月程度 | 2~3週間程度 |
重度 | 半年以上 | 2週間以上 |
頸椎捻挫の治療期間の目安は上記の通りです。とはいえ、症状は個人差もありますのであくまで参考程度に考えて頂ければと思います。
安静にする期間中は、積極的なリハビリはするべきではありません。痛めた部位やその周囲で炎症反応が起きている場合、逆に症状が悪化する可能性があるからです。病院へ行き医師の診断を受ければ、どのくらいは安静にしてくださいというお話を聞けると思いますので指示に従いましょう。
早く症状を治したいからといってこの時期に整体やマッサージ店に行くのは厳禁。下手をすれば何年も悩まされる後遺症に繋がるリスクもあります。
ある程度炎症が治まり、症状が定着してからは状態に合わせてリハビリを行いましょう。首のリハビリ、というと何となく首をバキボキする手技を思い浮かべる人もいるかも知れませんが、解剖学や頸椎捻挫の病態を知っている理学療法士はそんな方法を選択しませんのでご安心を。
筋肉や関節のコンディションを整えることで少しずつ症状を改善させていきます。リハビリで頸椎捻挫を治す、というより、自然回復で頸椎捻挫が自然治癒しやすくなるように身体環境を整える、といった方が正しいかもしれません。
では具体的にどれくらい改善までの期間が短くなるのか?と問われると返答に困ってしまいますが、少なくとも電気治療や牽引、湿布と痛み止めだけの治療よりは大幅に治療期間が短縮されると思います。
後遺症が残りにくくなる
- 頸椎捻挫と診断されてから頭痛に悩まされるようになった
- めまいや頭重感でいつもスッキリしない
- 昔は無かった肩こりが頻発するようになった
事故の後しばらくして首の痛みはある程度治まったものの、上記のような症状が後遺症として残ってしまったという話を聞いたことありませんか?頸椎捻挫はこういった後遺症が生じやすいと言われています。
リハビリをすれば100%こういった後遺症を防ぐことが出来る、とはさすがに言い切れませんが、軽度~中等度の頸椎捻挫であればある程度防ぐことが出来ます(テラサワ調べ)。
首に変なクセがつかない
事故によって生じた頸椎捻挫は、多くの場合首に強いストレスが生じることで起こります。そのため頸椎は部分的に若干ズレたり捻じれたりすることがあり、そういった位置の異常は痛みが無くなった後も適切なケアをしない限りなくなりません。
わずかなズレであればすぐに何か症状が出るという訳ではありませんが、何となく首が動かしにくい、違和感がある、といった症状は加齢とともに変形性頚椎症や頸椎椎間板症など首の疾患に繋がる可能性が高くなります。
リハビリでこういった位置の異常を修正しておくことで、将来首に関する病気の発症リスクを軽減することが出来ます。
どのくらいの頻度で、どのくらいの期間リハビリをすればいいの?
症状や理学療法士の技量によって必要頻度や必要期間が変わってくるため、一概にこのくらい、といった明言はしにくいというのが正直なところです。
参考までにテラサワがリハビリ担当になったと仮定した場合についてお話させて頂くと、
リハビリ開始:急性期を脱してから(重傷度にもよるが受傷から1週間~10日後以降くらい)
リハビリ頻度:最初は40分を週1~2回程度。1か月ほど経過して順調であれば頻度を隔週ないし3週に1度程度に。
リハビリ期間:平均して2~3か月程度。回復が芳しくなければそれ以上
こんな感じでしょうか。もちろんどの程度の重症度かによって状況は変わりますが、現状はこれくらいの頻度・期間で対応させて頂いている方がほとんどです(ちなみにこれは完全にテラサワの主観的な感覚なので、理学療法士によっては全然違うという人もいると思います)。
ある程度時間の経ってしまった頸椎捻挫も良くなるの?
数年前に事故で首を痛めて、それからずっと首や頭が重だるい、めまいが残る、痛みが取れない・・・そんな悩みをお持ちの方は実はけっこうたくさんいます。
リハビリで症状は改善しますか?と聞かれることがあるんですが・・・正直やってみないと分かりません(苦笑)
人によっては数年来の症状が改善したという方もいらっしゃる一方、ほとんど効果がなくあまり変わらなかった、という方もいます。
ただ、長年症状に悩んでいるということであればダメもとでリハビリを受けてみるのも手ではないでしょうか?
首のリハビリって難しいって聞いたけど・・・
首は全身に巡る神経や血管が通る部分でもあり、下手な動かし方をすると大変なことになってしまう・・・
医療に携わる人間でなくとも、首に対するイメージは同じだと思います。その通りです。やはりとてもデリケートな部分なので、他の部位と比べてもアプローチは丁寧にやる必要があります。
そのため、正直な話、首に対するリハビリが苦手という理学療法士は年齢や経験年数問わず沢山います。なので病院でもリハビリで首に対するアプローチはあまり積極的におこなっていないというところも少なくありません。
それゆえに、ネット記事などでも首の疾患は中々良くならないといった情報が散見されます。
ただ、しっかりとリハビリを行えばけっこう多くのケースで首周りの悩みを解決できるので、首の治療が得意な理学療法士がいる病院を探してみてください。
ちなみに、なんですが・・・
テラサワはけっこう首の治療が得意です(笑)
もちろん全てのケースでリハビリが有効という訳ではない
最後にこんなことを言うのもアレですが・・・もちろんすべての頸椎捻挫に対してリハビリが有効かと言えば、そうではありません。例外もあります。
仮に軽症だったとしても、むしろリハビリをやらない方が回復が早くなるというケースもありますし、体質的に低周波等の物理療法の方が効果を感じるという方もいます。ただそのあたりは一度リハビリをした後にお互いの感触で判断すればよいので、まずは一度頸椎捻挫のリハビリを体験してみる、というのがいいんじゃないかなと思います。
むち打ち症になったらとりあえず運動器リハビリがオススメ
頸椎捻挫後、運動器リハビリを受けられる環境があるという事であればとりあえず受けてみる、というのがオススメです。合う合わないはあると思いますので、何回かやってみて効果を感じられないという事であれば別の治療法を模索すればよいので、まずはやってみましょう。
病院に行かずに整体やマッサージ店にいくという選択を、否定するわけではありませんが・・・
テラサワだったら理学療法士のいる病院やクリニックに行きます(笑)
ということで今回の記事は以上です。最後までお読みいただきありがとうございました。