『身体が柔らかければ良い』という考えを持っている人は危険です!

こまったさん

私は身体がすごく柔らかいんです。なのになぜか肩や腰が痛くなりやすくて・・・。

あなたは身体が柔らかい方ですか?硬い方ですか?もし身体が柔らかい方だったとしたら、身体の痛みの悩まされず健やかに毎日を送れていますか?

一般的に、身体の柔軟性は筋肉や関節の問題に相関関係があると言われています。身体が硬ければ身体を故障しやすく、逆に柔らかければそう言ったリスクも少なくなる・・・このように考えるのが普通ですよね。病院や整骨院、整体等に行っても「身体が硬いから柔らかくしないといけません」なんてフレーズがしょっちゅう飛び交っています。

もちろん身体の柔軟性を高めるということは健康な身体を維持する上で重要なポイントのひとつではありますが・・・柔軟性ばかりにフォーカスし過ぎると逆に健康を害してしまうことも。今回の記事では、『柔軟性』というワードに焦点を当ててみたいと思います。良ければお付き合いください。

目次

身体の柔軟性って何?

改めて定義する必要もないかもしれませんが・・・身体の柔軟性とは、『からだの柔らかさ』のことです。身体が柔らかい=柔軟性が高いと考えられることになります。ということは、身体が硬いということは、柔軟性が低いと言えるワケですが・・・

身体が硬い、ということは、つまり『何が硬い』んでしょうか?

身体が硬い=関節が硬い、と捉えられることが多いですが、骨はそもそも硬いものです。骨と骨のジョイントである関節が硬いのは骨の硬さ以外の因子によるものだったりします。具体的には、

  • 筋肉
  • 靭帯
  • 筋膜
  • 靭帯
  • 脂肪
  • 血管
  • 皮膚

など、様々な組織の弾力性、伸張性をひっくるめたものが身体の硬さに影響を及ぼしてきます。これらの組織を総称して『軟部組織』と言い、軟部組織の硬さが身体の柔軟性を決定づけるのです。

ただ、柔軟性が高いからといって機能的な可動性が良好とは限りません。機能的な可動性、という言葉は聞きなれない方も多いと思います。以下では機能的な可動性と柔軟性の関係性についてお話します。

機能的な可動性=柔軟性ではない

例えば、前から手を真っすぐに上に挙げた場合、フルレンジで関節の可動角度は180°となります(肩関節屈曲)。

手を上までまっすぐに上げてください、と言われて苦も無く肩関節を180°屈曲させることが出来ていたならば、『肩関節屈曲の機能的な可動性は180°』といえます。ただ、この肩関節の動きに関与しているのは肩周囲の軟部組織の柔軟性のみではありません。肩を屈曲させるために必要な肩周囲の筋力その筋力を適切にコントロールする脳からの指令など、この運動を完遂させるためには柔軟性以外の要素も絡んできます。

つまり、機能的な可動性を考えた場合・・・軟部組織の柔軟性はもちろん非常に重要な要素のひとつであることは間違いありませんが、それだけでは決して必要な運動は成り立たないということです。

怪我や不調を防ぐには機能的な可動性が不可欠

さて、ここからがこの記事の中で最も伝えたい話となります。肩や腰の痛み、あるいは怪我など・・・関節における不調を出来る限り起こしにくい身体を手に入れたいと思った場合に重要なのが、『他動的な可動性=機能的な可動性』に出来るだけ近付けるということ。この点にフォーカスしながら身体のケアを行えば、間違いなく関節の痛みや怪我に悩まされる頻度は少なくなっていきます。

他動的な可動性、というと少し専門的で堅苦しく聞こえるかもしれませんが、いわゆる「リラックスした状態で人にストレッチしてもらった時に出せる可動域」と捉えてもらえば分かりやすいと思います。もちろん力づくで伸ばす、という訳ではありません。機能的な可動性は前述した通りです。

先ほどは肩を例に出してお話したので、今回は股関節を例に挙げながら説明します。

膝を伸ばして、こんな風に足を上げるストレッチ、専門的な言い方をするとSLRとかっていうんですが・・・上の絵は他動的に動かしている様子になります。例えばこのように足を上げてもらった時は90°くらいまで股関節を曲げられたのに、自分で上げようとしたら70°くらいまでしか股関節を曲げられないとしたら、股関節の他動的な可動性と機能的な可動性の差は20°程度、と言えます。

体のどの部分の関節においても、この両可動域の差が大きいのであれば動作や姿勢の中で筋肉や関節を痛めやすく、スポーツではもちろん、日常生活の中でも不具合が生じやすくなります。

結論、柔軟性ばかり高めてもダメ。

怪我の予防で筋トレが推奨されるのは、こういった側面もあります。もちろんゴリゴリに強靭な肉体を手に入れたいという方はそこまで多くないと思いますし、健康的な日常生活を送りたいという望みをかなえるだけであれば筋トレは最小限で問題ありません。ひとつの視点として動作の中で筋出力が十分に発揮できているか否かという部分に意識を向けることが出来れば、改めて負荷をかけた運動を行わなくても大丈夫です。

例えば今現在、身体は柔らかいのに肩の張りや痛みで悩んでいるという方がいるとしたら、もしかしたら肩甲骨や肩周りの筋肉が必要な筋出力を発揮できていないのかもしれません。それはもちろん筋力の問題かもしれませんし、腕や肩の使い方、体幹の固定性などに問題がある可能性も考えられます。いずれにせよ、痛いからほぐす、更にストレッチで伸ばす、という選択肢のみでは症状の根本的な解決には中々たどり着けないのではないかと予想できます。

こういったケースから生じる身体の問題はレントゲンを撮っても画像に現れないことが多いので、整形外科に行っても

骨や筋肉に問題はないからしっかり動かすこと。湿布を出しておきますね。

こんな感じの対応で、何だかもやもやが残るうえに症状も改善しない、という事態に陥りがち。

症状に心当たりがある方は、是非理学療法士がいる病院の受診をおススメします。適切なリハビリを行い、セルフケアを真面目に行えば多くの場合で症状が改善するはずです。

といったところで今回の記事はおしまい。最後までお読み頂きありがとうございました。

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この記事を書いた人

松本市にある武内整形外科クリニックに勤務する理学療法士。
産まれも育ちも長野県で、地元が大好きな39歳。
臨床年数に胡坐をかくことなく、日々知識と技術のアップデートに邁進しています。
健康に関する情報やリハビリに関する情報、勤務する武内クリニックに関する情報などをブログで不定期に発信していきます。

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