湿布(シップ)の効能と、効果的な使い方

ども。

武内整形外科クリニックの理学療法士テラサワです。

カラダのどこかが痛い時

選択肢のひとつとして考えるのが

湿布の使用

痛かったらとりあえず湿布を・・・みたいに考えるヒトも少なくありません。

ただ、湿布について良く知らずに、

痛いから貼っておこう

と考えるのはあまり好ましくありません。

場合によっては湿布に依存することで症状の回復を遅らせてしまう事も。

というコトで今回は

湿布をテーマにお話させて頂こうと思います。

普段から湿布に依存しがちな方は是非目を通してみてください。

目次

湿布ってどんなもの?

さて、ではいつも通り最初は定義的な部分のお話。

おそらく多くの人の湿布のイメージは

痛いところに貼っておくと痛みが緩和してくるベタベタしたやつ

みたいな感じではないかと。

あ、関係ない話ですが・・・

湿布の元祖は古代ギリシャの時代からあるそうですよ。

そんなにも昔から、『痛みには湿布』みたいなイメージがあったんですねー。

湿布の効能

市販されている湿布に入っている主な成分は

  • 感覚神経を軽く麻痺させ、痛みを感じにくくする成分
  • 血流を良くして痛みを緩和する成分
  • 冷感を与え、細胞の活動を抑えることで痛みを軽減する成分
  • 温感を与え、血管拡張作用で循環を改善し痛みを軽減する成分
  • 炎症に対して解熱、鎮痛、消炎作用をもつ成分

このあたり。

中でも、湿布の効きの良し悪しを決めるのは

炎症に対して解熱、鎮痛、消炎作用を持つ成分、いわゆる

経皮鎮痛消炎成分の質や量

です。

病院で処方してくれる湿布の場合、この成分がしっかり含まれている、というコトになります。

湿布の種類

湿布は

  • 冷湿布
  • 温湿布

そして

  • パップ剤
  • テープ剤

に分かれます。

まず、温湿布と冷湿布ですが・・・

温湿布に関してはカラダが温かく感じる成分を含んでおり、慢性的な肩こり・腰痛に効果があるとされています。

対して冷湿布カラダが冷たく感じる成分を含んでおり、ぎっくり腰や捻挫の直後など急性期の場面でよく使われます。

次にパップ剤とテープ剤の違いについて。

パップ剤というのはヌルっとしたちょっと厚めのやつ。水分を多めに含んでいて肌への刺激はちょっと少なめ。ただ成分的にはちょっと弱く、ヌルっと剝がれやすいので使いたがらない方も多いかも。

テープ剤というのは、最近主流の薄いテープタイプの湿布。薄いわりに成分が強めで、ちょっと肌がかぶれやすいという難点アリ。

なので種類としては

  • パップ型の温湿布
  • パップ型の冷湿布
  • テープ型の温湿布
  • テープ型の冷湿布

の4種類。

病院とかに行くと、最近はもっぱらテープ型の冷湿布を処方されますが・・・

慢性的な腰痛や慢性的な肩こりなどであればむしろ温湿布の方が症状が緩和する、というケースも少なくありません。

慢性の痛みで、冷湿布が効かないなーと感じている方は試しに一度温湿布を使ってみてもいいかも知れませんね。

湿布で痛みは治るのか

痛みを治せるか否か

という視点で見ると、厳密に言えば治せないことも多いと言わざるを得ません。

なぜなら湿布は

痛みの原因を除去することを目的としているわけではなく、痛みを抑えることを目的としているから。

病院などで処方してもらえる湿布は、前述した通り経皮吸収鎮痛消炎剤という成分が多く含まれています。そのため痛みの原因がその部位の組織における炎症そのものであり、炎症を抑えれば痛みの元凶を除去できる、といった場合は湿布を貼っておくことであたかも症状が消えるように感じます。

ただ、これは湿布が炎症を治した、というより

炎症が治まるまで、湿布が過剰な痛みを感じにくくしている

というのが実際のところ。

捻挫やぎっくり腰直後の炎症反応というのは、基本的に24~48ないし72時間程度である程度落ち着いてくるものです。

でも、その間何もしないと痛くて仕方がない。痛いから無意識のうちに周囲の筋肉にも過剰に力が入るし、神経も余計に過敏になる。循環も悪くなる。そういう反応は炎症反応を更に刺激し、治るのが遅くなる・・・。

だからその期間、湿布を貼って感覚神経をちょっと麻痺させてみたり、炎症反応自体を抑え込んでみたりして痛みそのものをしのぐわけです。

特に市販の湿布薬は病院で処方されるものと比べ、含有成分として炎症を抑える経皮吸収鎮痛消炎剤の性能はイマイチ。

なので、冷湿布であれば主にひんやり感と神経をほんのり麻痺させる成分で症状を緩和する感じ。

病院で出される湿布ほど効かないなーと感じるのは、こういう理屈なんです。

あと、病院で処方される湿布薬を貼っても全然症状が良くならないなーとかって言ってるヒト、けっこういますよね?

それはそもそも、痛みの主な原因が湿布を貼っている部位の炎症ではないから。

具体的には

  • 湿布を貼っている部分ではない別の部位に主な原因がある
  • 炎症以外の要素が主な原因になっている

こういったケースです。

湿布を貼っている部分ではない別の部位に主な原因がある

例えば、肩が痛くなったから肩に湿布を貼った。何となく貼ってないよりはいいけど、痛みが緩和されているという感じはイマイチ・・・みたいな話、良く聞きますよね?

首からきている痛みなどであった場合、原因そのものが肩にあるワケでは無いので効果としては実感しにくくなります。

あとは、肩甲骨の動きが悪かった場合、結果的に肩の動きが制限されて肩の周りに無理な負担がかかることで痛みが出る場合もあります。こういったケースは結果として痛みが出ている部位周辺にも炎症反応が起きているので、湿布を貼ることで炎症反応は抑えてくれます。

ただ、結局肩甲骨の動きに目を向けない限りは肩を動かすたびにいつも過剰な負荷がかかり、炎症が続くことになるので・・・痛みは無くなりません。

むしろ、過剰な負荷がかかっているのに湿布で痛みを無理矢理抑えていることで、気付かないうちに肩関節にかかる負担はどんどん蓄積されていきます。で、湿布でも抑えきれなくなって仕方なく病院に行ったら重度の肩関節周囲炎、治るまですごく時間が必要になった・・・という話は本当に多いんです。

・・・と、これらはあくまで一例ですが、肩にしろ腰にしろ膝にしろ、主な原因が湿布を貼っている部位ではない場合は、どんなに良い成分をたくさん含んだ湿布を貼ったところで満足のいく効果は得られないでしょう。

炎症以外の要素が主な原因になっている

分かりやすいのは、循環不全・・・いわゆる血の巡りが悪くなっていることで痛みが出ているケース。

例えば、筋肉が縮んでしまっていたり逆に伸びすぎてしまっていたり。こういう場合は湿布を貼っても中々症状の緩和が感じられません。

もちろん、湿布の中にも血管を拡張するような効果のある成分も入っていたりはしますが・・・

結局、筋肉を適切な運動範囲で適切な負荷をかけながら動かす

というコトをしない限り、いずれ循環は悪くなります。

動かすべき筋肉や関節を動かさないでいると、姿勢が悪くなります。姿勢が悪くなると、カラダの様々な部分に過剰な負荷もかかりやすくなります。様々な部分で循環不全が生じやすくなりますし、炎症による痛みが出現する可能性も高くなっていきます。

こまったさん

初めはちょっと腰が痛いだけだったのに、最近は膝も痛い、背中も痛い、湿布は貼っているんですけどね…

こういう思考は、湿布に依存し過ぎて様々な痛みを作り出してしまうパターン。

気をつけましょう。

効果的な湿布の使い方

これまで、

湿布に頼り過ぎるのは良くない

的な話ばかりでしたが・・・

湿布が痛みを抑えるための強い味方であることは紛れもない事実です。

大事なのは使い方。

炎症が強い時はとりあえず冷湿布を

腫れている、熱を持っている、赤くなっている・・・

もちろんケースバイケースではありますが、こういう場合は基本的に急性炎症症状。

炎症を抑えるために冷湿布を貼りましょう。

肌がかぶれやすいヒトはテープ型よりパップ剤の方が良いかもしれません。パップ剤は水分量も多くひんやり感が持続しやすいため、安静にしている分には結構オススメ。ただ、良く動く場合なんかはすぐ湿布が捲れちゃったりするんですよねぇ。

で、3日~長くても1週間程度湿布を使っていれば、急性炎症が主な原因である痛みはほぼほぼ良くなります。

逆に、それ以上痛みが続くのであれば湿布だけで対応するという判断はダメ。

おそらく他に本当の原因があります。

お医者さんでしっかりと診てもらいましょう。

慢性的な痛みであれば温湿布を試してみる

意外と温湿布って使ったことがない方も多いんじゃないでしょうか?

でも、慢性的な肩こり、腰痛などであればむしろ温湿布の方が痛みを抑えられる可能性が高いかも知れません。

特に冷え性や体温の低い方等はそもそも血液循環があまりよくない方も多いので、温めながら血流改善も図れるという意味でも温湿布はオススメ。

効果の意味をちゃんと理解しておく

湿布は痛みを抑えるものであり、痛みを治すものではありません。

湿布の効果で痛みが和らいでいる期間に、ただただ安静にしていれば根治療に繋がるという考えは持つべきではないと思います。

もちろん、安静が必要なケースも多々ありますが、一定の時期を過ぎたらちゃんと筋肉や関節を動かすべき。

こういった考えは常に頭の片隅に置いておきましょう。

要は、運動をしないと根本の問題は解決しませんよ、という話。

おわりに

今回は湿布について少し詳しくお話させて頂きました。

テラサワ自身も、湿布はけっこう使います。

生まれて初めてぎっくり腰になった時なんかは、病院で処方された湿布のありがたさを痛感しました。

ただ、頼り過ぎは良くありませんし、依存は結果的に痛み症状の長期化につながります。

湿布はあくまで痛みを抑えてくれるだけ。

肝に銘じておきましょう。

では。

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この記事を書いた人

松本市にある武内整形外科クリニックに勤務する理学療法士。
産まれも育ちも長野県で、地元が大好きな39歳。
臨床年数に胡坐をかくことなく、日々知識と技術のアップデートに邁進しています。
健康に関する情報やリハビリに関する情報、勤務する武内クリニックに関する情報などをブログで不定期に発信していきます。

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